
腰・股関節の痛み
腰・股関節の痛み
腰の痛みは、腰の構造や機能に関わる様々な要因によって引き起こされます。
また、腰の痛みの原因は様々で疾患、外傷、炎症、神経障害、筋肉や腱の問題などによって発生することがあります。日常の動作、例えばボタンをはめるなど細かい動作をうまくできなくなった、起床時に腰のこわばりを感じる、動かすと痛いなどの症状がある場合には早めに当院へご相談ください。
突然起こる強い腰の痛みで、何かを持ち上げようとしたときや腰をねじる動作をしたときに起こることが多く、場合によっては動けなくなってしまうほどの激痛が現れます。痛みの原因は様々ですが、腰が動く関節部分や軟骨(椎間板)に許容以上の負荷がかかり、捻挫や椎間板損傷が生じる、腰の筋肉や腱・靱帯などの軟部組織の損傷、などが多いと考えられます。
腰への負荷によって椎間板の外側(線維輪)が傷つき、椎間板の中身であるゼリー状の髄核(ずいかく)が、後ろや横に飛び出してしまう病態を腰椎椎間板ヘルニアといいます。突出した部分(ヘルニア)が神経を圧迫し、腰やでん部、下肢にしびれや痛みが起こります。背骨が横に曲がって、動きにくくなったり、重いものを持ち上げたときに強い痛みを伴ったりすることもあります。幅広い世代で発症します。発症の要因には、腰に過度な負担がかかる重労働や激しいスポーツ活動が挙げられますが、加齢による椎間板の脆弱化、遺伝的要素、喫煙との関連性も指摘されています。
治療では、強い痛みがある時期はコルセットを装着して安静を心がけ、消炎鎮痛剤、坐薬、神経ブロック(炎症を抑える薬剤の注射)などで痛みを緩和します。痛みが軽くなれば、牽引や運動療法を行います。これらの保存的治療を2~3カ月行っても症状が改善しない場合や、痛みをすぐに取り除きたいといった場合には手術が選択されます。手術では、椎間板から飛び出して、神経を圧迫している髄核を取り除きます。近年では、MED(内視鏡下椎間板摘出術)やPED(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)といった内視鏡による低侵襲手術も広く行われるようになっています。また、髄核に薬剤を直接注入する椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)という治療法もあります。
腰痛の多くは、腰椎に負担がかかることで起こりますが、以下のような病気が背景になっている場合もあります。安静にしていても痛みが軽くならない、あるいは悪化する、発熱がある、しびれて力が入らない、といった症状を伴う場合は、放置せずに整形外科を受診してください。
背骨(せぼね)は、椎骨(椎体、椎弓)とそれをつなぐ椎間板、黄色靭帯などで構成されており、その内側には脊髄の神経が通る管状の脊柱管があります。腰部脊柱管狭窄症は、加齢や重労働などによって椎間板や椎骨が変形したり、黄色靭帯が肥厚したりすることで、脊柱管が狭くなり、中の神経が圧迫される疾患です。腰や足の痛み、しびれなどの症状が起こります。腰椎の代表的な疾患で、高齢の方に多くみられます。圧迫される神経の場所によって痛みやしびれなどの現れ方が異なりますが、特徴的な症状として間欠性跛行(かんけつせいはこう)があります。安静時にはほぼ症状はなく、しばらく歩くと、でん部、太もも、下肢に痛みやしびれ、こわばりが生じて歩行が困難になります。前かがみになったり、腰かけたりして休むと症状が軽減しますが、再び歩き出すと症状が繰り返し現れるというものです。脊柱管狭窄が進行すると排尿・排便障害が起こることもあり、その場合、手術が必要となります。
急性期で痛みが強い時には、コルセットを装着し安静を保ちます。薬物療法では神経周辺の末梢血管を広げて血流を改善する薬剤や神経痛を抑える薬剤を用いて症状の改善をめざします。リハビリテーションや神経ブロックなどを行うこともあります。このような保存的治療を数カ月行っても改善がみられず、日常生活に支障が出るような場合には、手術を検討します。
仙腸関節炎とは、骨盤にある「仙腸関節」が炎症を起こし、腰やお尻、太ももに痛みを引き起こす疾患です。
仙腸関節は、上半身の重みを支え、歩行時の衝撃を吸収する重要な役割を担っています。炎症が進行すると、慢性的な腰痛や動作時の違和感が生じ、日常生活に支障をきたすことがあります。
仙腸関節炎は主に
上記のような症状がみられます。
軽度の症状の場合には、ストレッチや鎮静剤・消炎剤による痛みの緩和治療を行います。重度の場合にはブロック注射を行い、炎症を抑える治療があります。
症状が続く場合には早期の診断と治療がとても重要です。
股関節は、大腿骨と骨盤のつなぎ目にある関節であり、膝や足首などと同様に、体重を支える重要な部位です。股関節の痛みで、歩く・階段・しゃがむなどの日常的な動作がつらい、スポーツで痛みがあるなど股関節の痛みに悩まれている方も多いと思います。運動不足や肥満、スポーツ外傷、加齢による関節の変形などが原因となることが多いです。そのまま放置していると日常生活などに支障が出る危険性が高くなるので、なるべく早く当院へ相談ください。
股関節は足の付根にある大きな関節です。太もも側の大腿骨頭(だいたいこっとう)が、骨盤側のお椀の形状をした寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込み、大腿骨と骨盤をつないでいます。寛骨臼と大腿骨頭の表面は軟骨に覆われ、その周りは関節包に包まれています。
変形性股関節症は、先天性の疾患や外傷によって関節に過度な負担がかかり、軟骨の破壊や軟骨と骨に変形が起きる疾患です。多くは、先天性股関節脱臼や先天性臼蓋形成不全などの発育性股関節形成不全が原因となりますが、加齢変化や体重増加によって発症するケースもあります。女性に多くみられる疾患です。
関節軟骨がすり減ることで炎症が起き、初期には立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みを感じます。足の爪切りができない、靴下が履きづらい、正座や和式トイレが困難といった支障を来すこともあります。進行すると痛みが強くなり、持続痛や夜間痛(夜寝ていても痛む)が現れてADL(日常生活動作)障害も大きくなります。
股関節の可動域や痛みには個人差があります。変形が進んでいたとしてもすぐに手術が適応されるわけではなく、痛みの程度や生活面での不自由さを考慮しながら治療を選択します。痛みが少なく、日常生活にも不自由がない場合は、保存的治療を選択し、股関節周囲の筋肉を鍛える運動療法が中心となります。炎症や痛みを抑える薬剤を用いることもあります。保存的治療で改善しない場合、骨を切って股関節を整える骨切り術や、股関節をインプラントに置き換える人工股関節置換術が検討されます。
坐骨神経は、人体のなかで最も太くて長い末梢神経で、腰椎(背骨の腰の部分)から出ているいくつかの神経根が束になって集まり、足の先までつながっています。坐骨神経と呼ばれる部分は、膝上までを指し、それより下はいくつかの神経に分岐し、足先まで分布しています。
坐骨神経が圧迫・刺激されると、腰、でん部(尻)、太もも、ふくらはぎ、膝の裏、すね、足裏、足指などに電気が走ったような痛みやピリピリしたしびれ、麻痺などが起こります。これが坐骨神経痛です。坐骨神経痛とは、特定の疾患の名称ではなく、これらの症状すべてを指す総称です。症状を引き起こす疾患には、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、梨状筋症候群、仙腸関節炎などがあります。若い方には「腰椎椎間板ヘルニア」や「梨状筋症候群」が多く、ご高齢の方には「腰部脊柱管狭窄」や若い方と同様に「腰椎椎間板ヘルニア」が多くみられます。
坐骨神経痛の治療は、原因の疾患にかかわらず、まずは症状を緩和する対症療法が主体となります。保存的治療を開始し、それらを十分に行っても痛みが改善しない場合や尿や排便などに障害が現れた場合には手術が検討されます。
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